大切なことはすべて君が教えてくれた 教我愛的一切
たった15分間しか観ていなかったのに、釘付けにされてしまった!ことばが語る〈真実〉をこのように、実に簡単な形で示してくれたドラマはほかにあったろうか。ドラマのタイトルにももちろんぴったりだけど。この脚本は実ににくい!そういえば、このドラマは逆転したかたちで話をはじめていたーー結婚を予定しているふたりの教師を主人公に、第一話からセンセーショナルな展開を用意した。「結婚」が最後のゴールではなく、いろんなことの始まりであり、またこれまでの生活に大きな変化をもたらすものであるということを丁寧に描くことで、結婚をめぐって「それから」と「その後」をきちんと見せるドラマになっている。むろん、ここで私が感心したのはこうした設定ではない。私のこころが動かされたのはそこに使われたことばのひとつひとつが生きているということだ。ことばは表面の意味を意味しない意味を持つこと。そのことをもっとも簡単なことばのやりとりで分からせてくれた。私のこころはそれに深く動かされたのだった。「帰ってくる人は、さようならなんて言わない」。「さようなら」ではなく、「行ってきます」ではないかって。これほど感動的な言葉、しかしこれほど単純なことばは私はかつて聞いたことがない。この場面では「さようなら」ということばを口にした教え子に、「行ってきます」に改めさせた教師の、この「行ってきます」が励ましの言葉になっているのに対して、今度は恋人に向かって言った「行ってきます」ということばは変わりない愛のことばに変身している。これほど分かりやすい「寛恕」の意を表す言葉、そして「変わりない愛」を表す言葉に「行ってきます」ということばを持ってくることは、わたしはほかのドラマでは観たことがない。この脚本を書いた人は恐ろしい人だ。畏怖さえ感じる。このような瑞々しい感性を、ぜひ日本語を学ぶわたしの学生たちにも持ってほしい。そう願う。
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