2010/12/17

The White Countess

The White Countess
日本の邦訳タイトルでは「上海の伯爵夫人」、台湾の邦訳タイトルでは「異国情縁」とつけられたこの映画は、Ishiguro Kazuo の手による脚本、James Ivoryの監督作品である。この映画を初めて見たのはだいぶ前のことだが、最近、台湾のHBOで放送されたのを見て、やはり興味深い作品に思えた。 Ishiguroの脚本でありながら、映画化されてみると、濃厚なエキゾチシズムがいたるところに漂い、ときには息が詰まる思いをしながら見ていくしかな い箇所も少なくない。すでにいろんなところでも書かれているように、この映画は上海を舞台とするわりには、主役となる中国人が一人もいない。租界で生きる 異国の人びとが主役として振る舞うこと自体、植民地主義的であると言わざるをえない。なかでも、主役であるロシア女性の処理がどうしても気になってしかた がない。戦乱のなかを生き抜く女性を、なぜかどこか「シンデレラ物語」として処理してしまっている。英文、日文、中文のタイトルのどれも、このロシアの女 性が焦点であると指し示しているのに、主役不在の、あるいは伯爵夫人を支えた恋人の外交官(ラルフ)や、その友人である松田(真田)らの登場人物に主役の 座を奪われている。こうしたあまりにも典型的に反転する構造が、この映画を陳腐なものにしていく。

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