CRASH
この映画には、各階層の登場人物の偶然なる出会いが設定され、それぞれの物語が交差するかたちになっている。人間と人間、こころとこころがぶつかりあう。 その時の、行き違い、あるいは通いあうことのできない諸々な感情や気持ちがやがて、予想もつかない方向へと向かう。例えば、親孝行をしようとする黒人の警 部の物語。生きる気力を失った母親のために、仕事の合間を縫ってスーパーから新鮮な食材を運んでは、また冷蔵庫で古くなっていく手つかずの食材を捨てると いうことを繰り返さなければならなくても、決してあきらめずに母親をサポートしようとした。ところが、母親の方は彼にしばらく失踪?した弟を早く見つけて くることだけを望んだ。結果として、彼の弟はある誤解で殺され、亡き姿で彼の目の前に。そのとき母親が彼に投げた言葉は、スーパーでものを買ってくるより は、その時間で弟を捜してほしかった、と。少しでも早く弟を見つけていれば悲劇は回避できたんだと.......人助けの場合、相手はいったい何を望んで なにを必要としているのかを見極めなければならない.......この警部の場合は、母親がなぜ生きる気力を失ったのかをみるべきだったのか。自分がいく らがんばっても母親に振り向いてもらえない心理からか、弟を捜すのを二の次の問題にしてしまった。そのため、逆に母親の愛を失っていく。
ほかの登場人物はほとんど喜劇?に近い結末だったのに対して、この黒人警部だけは悲しい結末を迎えることになっている。しかし、例えば、裕福でインテリの 黒人夫婦の場合、果たしていつになったら外部からの差別を受けずにすむのか、そうした面から言えば、問題は相変わらず残ることになる。
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