パンドラの匣
太宰治の作品を映画化したもので、これほど軽快にできた作品は観たことがない。役者たちが若いだけになにか未熟さが残るだろうと観る前からの先入観が見事に裏切られた。表情の一つ一つ、ぞんざいに扱うことなく、せりふの一つ一つ、作者の精神を載せ淡々と、しかし生命力あふれんばかりの歩調で滑り出した本作、プラスそのちょっとアンニュイな音楽、実に実に見事としか言いようがない。文学作品で、しかも小品を映像化すること自体の難しさを考えれば、この作品は上出来である。華やぐ命、それが病体であろうが環境が苦しかろうが、その輝きを止めるものはなにもない、自らそれを止めることがなければ。戦後日本の社会から現代への通路がこうして、一つの作品によって拓くことになるとは、嬉しい驚きだった。
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